コポコポラ

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近況報告

こんばんは。からあげです。

ブログリハビリを兼ねて、最近の近況を報告します。

 

近況①「シュガーアップル・フェアリーテイル」のアニメを見た

TVアニメ『シュガーアップル・フェアリーテイル』公式サイト

Twitterでも何度か言ってますが、めっっっちゃくちゃ良いです。

絵も原作絵の透明感を失わず、アニメ化に適した絵柄で見てるだけで幸せになれます。

映像で見るシャルが普通に優しい、アンがきらきらした正しさを語ってくれる、砂糖菓子が美しいこと、ミスリルがかわいいこと……毎回新鮮に感動しています。

あと、物語としてもとっても面白いです!!!

お気に入り回は、Ep3砂糖林檎は裏切りの木です。

エンディングに切り替わってサブタイトルが浮き出た瞬間、姉と二人で「砂糖林檎は裏切りの木ーーーーー!!!!!!!!」と絶叫したくらい良かったです。

 

姉と二人で「やっぱり命の危機が一番面白いよな……」って言いました。

 

近況②ジャニーズにハマった

YouTubeショートで涙を美しく流す男達が流れてきて、あっという間に沼に沈んでいました。

やっぱり、泣きそうにない男達が泣いてるのっていいな、と思いました。良くない性癖が出てしまいました。

 

ジャニーズを知るとジャニーズJr.まで詳しくなる現象なんなんですかね?好きとか嫌いとか以前に、こんなに小さい頃から頑張っている子がいるんだ、と胸が熱くなりました。

 

生身の人間の頑張りにただ乗りさせてもらっていることを忘れずに、応援したいなと思いました。

ライブのチケットは全滅でした。

 

近況③この冬、全然本を読まなかった

由々しき事態でした。

 

近況④春、読書を再開し始めた

ちょっとずつ物語を読み始めました。勢いと才能のあるおもしれ〜女、好きです。

積んでる本いっぱいあるので読みたいです。

他にも、面白い作品がこの世には溢れているはずなので、もっと見つけていきたいです。

石田リンネ先生の新作も出ますし、茉莉花官吏伝も出ますし、三月最高の季節ですね。

作者様がクレバーなので、発売前から最高に面白いことが確約されています。それにしても筆が早すぎませんか?

茉莉花官吏伝のコミカライズも大大大天才なので興味がある方はぜひ読んでください。

 

近況⑤思想が強くなった

ジャニーズをかじったせいで、界隈がでかい≒解釈が山のようにある場所に触れたせいで、思想が強くなりました。より正確に言うと、自分の思想とか倫理観に何の根拠もない自信を持つようになってしまった気がします。

まあ、思想が強いやつの方が生きやすいのでOKです。(これも思想)

 

近況⑥泡用ボディソープ容器に液体ボディソープを補充した

私の入浴ターンでボディソープの泡が切れたため、詰め替えを探したのですが液体用しか見当たりませんでした。

5プッシュくらいすると、なんとかボディソープを吐き出してくれます。

こんな大人なのに、私の次に風呂に入った母親に「ねえ、からあげ……」と悲しい顔をさせてしまいました。

 

近況⑦弟の手柄を横取りした

弟が夕食作ってくれたのですが、母親が「からあげが作ったのー?」と言われたので「まあね」と言いました。すぐ近くに弟がいたので、否定される前提のボケでしたが、否定されなかったのでただの嘘つきになりました。

 

 

以上です。

支離滅裂近況ブログにお付き合いいただきありがとうございました。

 

9月に読んだものの超雑感

 

9月に読んだ本&漫画で好きだったものを紹介します。

 

(もう10月も三分の一終わったって?

聞こえないよ〜🫠)

 

○よろず建物因縁帳シリーズ(小説)

これめっちゃ面白かったですね…!

まだシリーズ最後までは読めてないのですが、男が祓える人(陰陽師ではなく曳家師)で主人公の女がわりと読者側の目線になっています。

怪異の物語が好き&匂わせ微恋愛の空気が好きな人は好きなお話だと思います。

仙龍(曳家師)がヒョロガリインテリ系じゃなくて、ガタイよくてタバコが似合う男前で興奮しますし、春菜(主人公)がバリキャリ思考の気の強い美人なので有難いですね……。

 

○探偵は教室にいない

タイトルから勝手に『全然登校してこないクラスメイトは実は天才で!?』という展開を予想して読み始めたら普通に他校の引きこもりでワロタ。そりゃ教室におらん。(ちゃんとあらすじを読め)

恋愛色はほぼなし。爽やかミステリで良かったです。

 

○百年文通

短いお話だけど、物語に起伏があってとっても面白かった。

机の引き出しを通して、現代の女の子と百年前の大正時代の女の子と交流する話。

キャラクターも魅力的だったし、かわいい女の子二人のやりとりをかわいいだけで終わらせずに山あり谷ありな問題を解決させていくところも素敵でした。

 

○メダリスト(漫画)

すんごい面白かった。

物語の展開も、キャラクターの背負うものも、台詞も、演出も、どれもめっっっっちゃくちゃ良かった。

絶対ネタバレだし長台詞だからTwitterで出すの我慢してたんですけど、一番好きな文章貼り付けて良い???

 

後から始めた貴方の前にはきっと希望がある

経験値が貯まれば追いつけるかもという希望が

あなたは追い抜かれる無力感を知らない

その差を埋める悲しさを知らない

この痛みを知らない人を金メダリストなんかにさせない!」

 

すっ……………ごくない…………?

しかもこの台詞(モノローグ)、主人公や一番のライバルのものじゃないんですよね。

名前はついてるけど、あんまり出てこない子なの。

これに関しては作者の意図をすごく感じていて、

天才と呼ばれなくても

学校の子が誰も知らないとこで

こうして死ぬ気で頑張ってるってことをさ

誰かに知ってもらえたらいいな」

というセリフがある通り、決してスポットライトを浴びることがない子にもそれぞれの長い長い努力の物語があることを伝えようとしているんだなあと思いました。

メダリストでは大会がいっぱいあるから、その大会しか出てこないような子たちが激アツモノローグを残して鮮烈な印象を与えて退場していくんですよね……。自分に賭けられないやつが運命に勝てるわけがないんだ!」とかね。

 

フィギュアスケートは奇跡を見守るスポーツ、という言葉がめちゃくちゃしっくりくる激アツスポーツ漫画なのでぜひ読んでみて〜!!!!

 

魔法使いの娘&ニ非ず(漫画)

これもめっちゃくちゃ面白かったですね。

元気で健康な女の子とソツなくて脆い男の組み合わせが好きなら読んだら良いと思う。

兵吾のキャラクターが絶妙で本当に良かった。

あとオカルト大好きなのでお話自体も好き。

 

○まとめ

他にも面白い本を読みましたがTwitterやふせったーで感想出し切っていたのでこのへんにしときます。

もし小説と漫画で一つずつ選ぶならよろず建物因縁帳とメダリストかなあ。めっっっっっっっちゃくちゃ面白かったので。

10月もいっぱい読書したいなあと思いました。

 

おしまい

「夜の光」読んだ!

今日は坂木司の夜の光を読みました!

 

問題を抱えた4人の高校生(ジョー、ギィ、ゲージ、ブッチ)が天文部で出会い、スパイとして戦場で頑張るお話。戦場というのは、高校のこと。窮屈な現実と戦いながら、仲間とミッションをこなし、自分の人生を歩いていく青春ストーリーです。

各々の抱える問題は重たいし、理解した顔してくるけど全然理解してない母親の感じとか妙に生々しいけれど、不思議と読後感が爽やかなのは、高校生の青春物語でもあるからだろうなあと思います。

だって、屋上でカレー作りながら星見てるんだからね!

 

彼らはスパイなので、当然コードネームがあります。例えば、ジョーは一見お嬢様っぽいからジョー。みんな、自分のコードネームがみんなめちゃくちゃ気に入ってる様子なのもほっこりします。

ちなみに、この本で一番素敵だなあと思った文章はこちら。

 

私をジョーと呼ぶ人間が、この世に三人だけいる。

それだけで、私は戦えるのだ。

すごく印象的な文じゃないですか?

文自体もかっこいいし、ジョーにとって3人が重要なことも伝わるし、ジョーの覚悟も伝わるし、「ジョーとしての自分」を気に入っていることも分かる。

この本は群像劇なので、4人それぞれのお話が入っているのですが、4人とも全員地の文で「本名はそんなに重要じゃない。コードネームで呼んでくれ(意訳)」みたいに言うんですよね。

単純に「コードネームかっこいい!(中二病治らない)」と思ったし、よっぽどスパイ仲間といることが救いになっているのだな、と思いました。

スパイ仲間と星を見ることが、頑張っているのは一人じゃない、と孤独を忘れさせてくれる貴重な時間だったんだろうなあと思うと、タイトルの「夜の光」がとてもあたたかい言葉に思えました。

 

おしまい

ニンゲン、インゲン、呪詛

やる気があるうちにどんどん行こう〜ということでどうでもいい話をします。最近の私の空想です。

 

 ◇

 

ニンゲン?

インゲン?

どっちなの?

ニンゲン インゲン ニンゲン インゲン ニンゲン インゲン ニンゲン…

インゲン

やっぱり、インゲンなのね

 

 目の前の女子が独特の調子で歌うへんてこな歌詞に、おれは目眩がした。ランドセルをどさっと置き、彼女の注意を引く。

「サチコ、なんの歌なんだよ……」

「あらケイタ、来てたの」

「けっこう前からいたっつーの。お前が理解不能の歌を歌ってるから声かけらんなかっただけで……」

「あら、ごめんなさいね?」

 軽やかに優雅に彼女は言う。あまり謝罪の意を感じられない。極めて遺憾である。

 彼女の名前はサチコと言う。少しばかり古風な名前を本人は嫌っているが、おれは本人の装いと足し引きしてちょうど良いじゃないかと思っている。

 サチコは、原宿で買ったというふりふりの黒のワンピースを身に纏い、頭のてっぺん近くで髪を二つに結んでいた。切り揃えた前髪にはこだわりがあるらしく、この間ふざけて水をかけたら前髪にかかってしまって、二週間口を聞いてもらえなかった。

 喧嘩の仲裁を頼んだ姉ちゃんからは、「もう小学六年生なのにあんたたちは……」と呆れられるし、とんだ災難だった。

 とにかく、サチコに関わるとろくなことがない。生まれてから十二年間、お隣さんをやってきて出した結論だった。

 なのに、どうして「お隣の幸子ちゃん、夏休みの宿題やってないんですって」と母さんから聞かされたらとんできてしまうのだろうか。

「サチコ、変な歌を歌ってないで、宿題やるぞ」

「あらケイタ、自分の持ってきてくれたの?」

 サチコ越しにまっさらのドリルが見える。今日は夏休み最終日だ。「あら」なんて余裕こいてる場合じゃないだろ!と揺さぶりたい。

「ケイタ、助かったわ。今絶望して呪詛を詠っていたところなの」

「あの変な歌は呪詛だったのか。でもどうして人間、インゲンなんて……」

 軽い気持ちで聞いたのに、サチコはひどく真剣な顔をした。おれは釣られて息をひそめる。

「言霊ってあるでしょう」

「ああ、なんか聞いたことあるな」

「古来より、言葉には力が宿るとされてきた。願いを乗せた言葉は力を持ち、言葉通りの結果が得られる、と」

 サチコの声は、キーは子供らしく高いのにひどく落ち着いている。その声を正面から聞くとこちらまで厳かな気持ちになってくる。おれは、ゴクリと唾を飲む。

「だから私は、周りをインゲンマメと思い込むことにしたの」

「はっ?」

 驚きで、おれは飲み込みかけていた唾を吐き出した。ばっちい。

「明日は始業式で、宿題を提出する日よね。そこで私は恥をかくわ。周りの人間に笑われるなんて耐えられない。そうだ、インゲンマメだと思い込めばいいんだわ、と思ったの」

「くだらねえ〜」

 サチコは真剣な顔のままで、こちらを揶揄っている様子はない。サチコはいつだって大真面目に馬鹿なのだ。

「やるぞ、サチコ。写していいから」

「全部写すのは申し訳ないわ。半分は自力でやる」

「なんで若干余裕があるんだお前は……」

 夏休み最終日の朝だというのに、彼女の余裕は崩れない。インゲンマメの歌を歌ってたくらい焦ってるくせに、とおれは彼女をこづいた。

 

 ◇

 

 「よし、あとは自由研究だけだな」

 おれはやれやれと肩を撫で下ろす。時刻を確認すると午後四時三十七分。思ったより余裕がある。それもこれもとにかくおれのドリルを写すように強制した結果だ。

「研究テーマどうしよう。何かやりたいことあるか?」

 時間に余裕ができたのだから、これくらいは本人に決めさせてあげてもいい。サチコは自立心が強い。こだわりが強いとも言い換えられる。しかし、仏心を出したことをおれはすぐに後悔することになる。

「私、学校の怪談を調べたいわ」

 おれは首を捻る。トイレの花子さんとか、そういうのを調べたいのだろうか。

「えーと、どんな怪談?」

「情報収集から始めるのが、研究よね。さあ、調査に学校へ向かいましょう」

 それはつまり、情報ゼロからのスタートだということで。しかも、ネットで調べられる情報では満足できないということで。

 おれは信じられない思いで叫んだ。

「サチコ、明日が提出日だってわかってんのかよ!」

「わかってるわ」

 鷹揚に彼女は頷く。その微笑みに、サチコはどこかの国の偉い姫で、おれは滑稽な部下なんじゃないかという錯覚までしてきた。なんでお前はそんなに余裕そうなんだ。頼む、焦ってくれ……!この、午後五時になろうかとしてるときに学校へ行こうとするな。

「ケイタ、今まで本当にありがとう。あとは私一人でやるから大丈夫よ」

 もう彼女の気持ちは固まっているらしい。

 おれは脱力した。もう、放っておいていいんじゃないかとおれの中の常識が囁いた。だって、この女が勝手にしたいだけだろう。おれは関係ないじゃないか。そうだよな、そうだ、そうだ……。

 しかし、夏休みの宿題を手伝いにきた、と告げたときのサチコ母の反応を思い出す。「ありがとねえ、ケイタくん」そう言って、サチコに内緒で成城石井のアイスを食べさせてくれた。

 アイスの恩義には、報いねばなるまい。

 成城石井のアイスは、ダッツよりも、値段が高いのだ。

 おれは目に光を取り戻し、サチコに告げた。

「いや、待てよ。わかったよ、おれもやるよ」

「? 別にやんなくていいのに」

「やらせてください! ていうか、お前が何かやらかしたらおれまで怒られるんだからな……」

 こうして、おれたちは夏休み最終日、夜の小学校へと向かった。自由研究のための、怪談探しだ。

 

 ◇

 

「おばけ、出ねえじゃん」

「おかしいわ。ケイタ、威嚇でもしてる?」

「してねーよ。おれのせいにすんな」

 小学校についたはいいものの、なかなか心霊現象には遭遇しない。このままでは自由研究がパアだ。

 おれはため息をついた。

「サチコ、諦めて家に帰ろうぜ。もう午後七時だ。日も沈んで、不気味だし」

「うーん、そうね」

 意外にも、サチコは同意を示した。彼女なりに、宿題を案じてはいるらしい。

「ケイタ、帰りましょう。でも、帰る前にちょっと花壇に寄っていい?」

「いいけど、サチコ、花好きだっけ」

「この間の登校日に寄ったら、きれいだったの。花壇で、ニンゲンとインゲンの歌を思いついたのよ」

「登校日って、二十二日?」

「ええ、私はクラスのみんなが宿題の進捗を話しているのを見て、震えあがったの。まだ手をつけてない私は、きっと始業式で笑い者になるんだって怖くなって、人間がインゲンに見える歌を作ったの」

「そんな前から宿題終わるか怯えてたなら、もっと早く片付けられただろ」

「ケイタ、正論は時に人を傷つけるわ」

「傷ついてないくせによく言う」

 おれたちはそんな会話をしながら、花壇にたどり着いた。

 すると、声が聞こえてきた。

 

ニンゲン?

インゲン?

どっちなの?

ニンゲン インゲン ニンゲン インゲン ニンゲン インゲン…

ニンゲン

やっぱり、ニンゲンなのね……

 

 おれはげんなりする。また、サチコが変な歌を歌っているのだ。

「おい、やめろよ」

 おれはサチコの方を振り向くと、サチコは強張った顔で固まっていた。

 口は、動いていない。彼女が唇を震わせて口を開く。

「ケイタ、私、歌ってないよ……」

 

ニンゲン インゲン ニンゲン……

 

 声は、たしかにサチコの声だったけれど、声の主は、花壇だった。

 花壇が、歌っていた。

「なんか、やばいな」

「走ろう、ケイタ」

 おれたちは後退り、一斉に走り出した。花壇から離れたはずなのに、尚も、声は追いかけてくる。

 

ニンゲン インゲン ニンゲン……

 

 走りながら、おれたちは問答をする。

「サチコ、『あれ』がどうやったら止まるのかわからないか!?」

「わかったらやってるわ! わからないから逃げてるんじゃない! あーもう、ただ歌を作っただけなのに!」

「あの歌は、どうやって作ったんだ!」

「花占いをしながら作ったの。あっ、もしかしたら、あの時、私最後『インゲン』じゃなくて『ニンゲン』にしちゃったのかもしれない……!」

 たしかに、あの声は「やっぱり、ニンゲンなのね」と歌っていた。今朝サチコから聞いた歌詞は「インゲンなのね」だった。

「だから、ニンゲンに執着して襲ってきてるってことか。どうすれば止められるんだ、そんなの!」

 くそっとおれは舌打ちした。言葉は力を持って、暴走してしまったのだ。

「もしかしたら、花壇の花に近づけば何かできるのかもしれないけど……」

 そこでサチコは黙る。原因が花壇の花にあるにしても、そこへ近づくということは、踵を返すということだ。すぐ背後には、『声』がいる。

 おれたちは、声に捕まったら終わりだ、と直感していた。どうなるかはわからないが、とにかく終わりなのだ。

 おどろおどろしい気配の前に、楽観視はできなかった。何より、この声からはニンゲンへの執念を感じた。

 息が乱れる。喉が痛い。

 もうすぐ門が見えてくるはずなのに、一向に見えない。声もぴったりと張りついている。

 サチコの泣きそうな声が聞こえてきた。

「ケイタ、私たち、また花壇に向かってる……!」

「そんな!」

 たしかに前を見ると、先ほど出発したばかりの花壇があった。時空が歪んでしまったみたいに、外へ出られなくなっているようだった。

 

 おれは観念して立ち止まる。このままでは、二人とも声に捕まってしまうと思った。

「サチコ、言霊ってあるって言ってたよな」

「ええ」

「おれたちは助かる、絶対に」

「そうね」

「おれが囮になるから、お前は花壇で原因を探れ」

「ちょっと、やだ、ケイタ!」

 叫ぶサチコを放って、おれは言い終えるや否や、踵を返した。後ろにいた声は、より近くにいたニンゲンであるおれに興味を示した。

 すでにおれは息が上がっている。喉からはマラソンの時みたいに血の味がした。それでも、追いつかれるわけにはいかないと、地面を蹴る。

 

 それでも、疲労が増して遅くなってしまう。

 疲れ知らずの『声』にとうとう追いつかれそうになった、その時。

 

 サチコの声がした。

「ニンゲン インゲン ニンゲン インゲン……私たちはインゲン。人間じゃ、ないよ」

 本物のサチコが、花壇で、花びらを散らせていた。

 

 声は「おれたちがインゲン」というのを聞いて、おどろおどろしい雰囲気を弱まらせる。おれは気が抜けて、その場に立ち止まった。

 

「ケイタ!」

 

 サチコの声で、おれは我に帰る。声が最後の力を振り絞って、おれに襲いかかってきた。声は、おれを諦めていなかった。

 一度力を抜いた体では、おれは身動きが取れない。

 終わりなんだ、と思った。けれど、もう一度サチコに名前を呼ばれた。サチコの声がすぐ隣からした。

「ケイタ!」

 あのサチコが、髪をぐしゃぐしゃにして、こちらへ手を伸ばしている。おれは、少しだけ、感動してしまった。

「なにやってるのよ! 早く手をとって!」

 彼女には、いつもの余裕なんてかけらもなくて、おれは迫力に押される。

「……ああ」

 サチコが、おれの手をひっぱる。声がおれを捕らえるより先に、サチコがおれを捕まえた。

 声は、完全にいなくなった。

 

 危機を乗り越えたおれたちの吐息だけが、夜の校庭にこだましていた。

 

 おれたちの夏休みは、この出来事を自由研究として完成させるまで終わらない。

 

 ◇

 

ニンゲン、インゲンの歌は実際に私が最近よく歌っているものです。むかつく人間がいたときに「あんたらそれでも人間かよ(笑)」の気持ちで作りました。気持ちはこもっているので、案外呪詛になったりして〜と思ってこの話を書きました。

 

読んでいるみなさんも、もしムカムカしたら自作の呪詛でも作ってみてください。

 

おしまい

少女小説との出会い 桜嵐恋絵巻

ブログを開設しましたわーい!思い立ったら行動の気まぐれ人間なので、どんな頻度で書くかは謎です。

今日は自己紹介がてら少女小説との出会いについて話します。

 

少女小説との出会いは、私が中学一年生の頃でした。夜遅くに、床にごろごろ転がりながらテスト勉強をしていたら、三段ボックスの二段目に文庫本が奥と手前に二列に並んでいて、奥の方に見たことのない本を発見しました。姉が見つからないように隠していたのを勉強に飽きた私が見つけちゃったんですね。

その時に発見したのがこの桜嵐恋絵巻です。

「深夜」「テスト前」「姉の隠していた物をこっそりと読む」ハマるシチュエーションは完璧に揃っていました。

テスト前夜にも関わらず、一気に読みました。面白かったです。

呪われ姫として生家から追い出されてしまった詞子と、左大臣家の嫡男にも関わらず駄目息子として周りから疎まれる雅遠。

寂しさを抱えた二人は出会い、恋に落ち、幸せな家庭を築いていきます。

この物語で私が好きなところは、一方的に男が女を幸せにする話じゃないところです。

詞子は雅遠と出会ってシンデレラのように幸せになりますが、雅遠は(最終的にはめちゃくちゃ立派な男になりますが!)決してザ・スパダリではありません。

本当にガサツだし、「雅から遠い」って悪口いっぱい言われているし、婚約をぶっ壊す手段が漬物を音を立てて食うだし……でも本当に優しいんですよね……!「おれバカだからわかんねーけどよ、」って真意をつけるタイプ。いや雅遠は実は頭いいんですので全然バカじゃないんですけど、平安時代が舞台なのに現代っぽい価値観のヒーローです。

雅遠は風流から遠くて、歌を読めません(平安時代ヒーローなのにそんなことある?)。詞子が歌を練習してあげたり、扇子にびっしりとカンペ(歌扇)を作ってあげたりして、雅遠は宴を乗り越えます。

他にも、雅遠は、詞子から教えられて楽器ができるようになります。

詞子とその周りを養うために、出世しようと思うようになります。

「詞子のために」と起こした行動で、次第に親や世間にも認められていくようになります。

呪われ姫が幸せになるシンデレラストーリーだけど、与えて与えられる、支え合いの物語でもあります。

 

大らかで明るい雅遠にひきずられるように、慎重で諦めがちな性格だった詞子もどんどん強くなっていきます。

「わたくしが呪われていて、あなた様が無遠慮で怖いもの知らずの方だからこそ、こうしてお逢いできました」(6巻 遠雷より)

詞子めちゃくちゃ前向きになってるーーー!(号泣)

茶化した会話の中とは言え、呪われたことすらこう言えるなんて愛ってすごいなあと思いました。

詞子もすごく素敵な女の子なんですよね。上品で、慎ましくて、内助の功で雅遠を助ける。ザ・平安貴族女性という感じです。私の平安貴族女性のイメージが詞子から作られている可能性も否定できませんが……。

 

あと物語自体も好きなんですが、深山くのえ先生の文章が大好きです。

とにかくしっとりな文章で、落ち着いていて、やさしい気持ちになって、でも不思議と艶があるんですよね……。桜嵐読んでから「掻き抱く」とか「噛みつくような口づけ」的概念がめちゃくちゃ好きになりましたね……。静からの動っていいよね。

 

藤間麗先生の絵もめちゃくちゃ合っています。またくのえ先生とのタッグを組んでほしい。

藤間先生の絵がこの物語の魅力をさらに上げていると思います。

 

みんな、桜嵐恋絵巻を読もう!(一巻はアンリミ入ってます)本編は全九巻です。

 

余談なんですが、少女小説って後日談がめちゃくちゃ手厚いですよね。読者が甘々なのを求める×出し惜しみしない出版事情の相乗効果(使い方合ってます?)なのかもしれませんが、とにかく読者としてはめちゃくちゃ助かります。桜嵐も番外編出てます。「夢咲くころ」です。雅遠が三位の大納言まで出世しててじーんとなります。あと私は白菊と宮様の話が好きなのと、艶子が好きです。

余談2 少女小説って当て馬出てくる率低くないですか?私が最初に読んだのが桜嵐だからそう思うのかもしれませんが……。私けっこう当て馬当てるやつできなくて、少女小説を読んでたからかな〜と勝手に少女小説のせいにしています。桜嵐も二人のピンチに恋敵の出現はありません。斎王の身代わりに連れ去られたりして物理的に離れ離れになることはあります。

 

 

いっぱい話せて良かったです。おしまい。